
[登壇報告]熊本大学大学院 生命科学研究部 生体機能病態学分野 消化器内科学 勉強会「『内視鏡AIの未来』~人工知能(AI)を用いた内視鏡診断支援~」
2021年6月2日に、株式会社AIメディカルサービス(以下、AIM)はAIMが実施している内視鏡AIの開発に関して、内視鏡検査に関わる医師の方々へ報告する勉強会をオンラインで行いました。本稿では勉強会の内容を、パネルディスカッションを中心にサマライズします。
勉強会概要
対象(参加者):熊本大学病院・熊本総合病院・国保水俣市立総合医療センター・服部胃腸科に所属する内視鏡医の先生方
場所:Webミーティングツールを利用したオンラインによる開催
参加者人数:26名
講演内容
なぜ上部消化管を対象に内視鏡AIを開発しているのか?
2018年12月6日に大腸の腫瘍性ポリープの判別に関する内視鏡画像診断支援プログラムが薬機法に基づき,クラスⅢ・高度管理医療機器として国内初の承認を取得しました。2021年6月現在、国内では大腸の領域で3社の内視鏡画像診断支援プログラムが発売されています。一方で、上部消化管検査の領域やカプセル内視鏡の領域では、日本において薬事承認を取得したAIはありません。
AIMが上部消化管を対象に内視鏡AIを開発している主な理由は「早期ステージでの発見で、生存率の大幅上昇が期待できるから」です。胃がんや食道がんは他の消化管のがんに比べ、ステージが進行することによる5年生存率の減少幅が大きく、早期発見によって生存率が上昇することが期待できます。そのため、上部消化管を対象にした内視鏡AIを開発することが現場にとって有用性があると考え、開発を進めています。
内視鏡AIの未来
内視鏡AIは、内視鏡検査に関わる人をWIN-WINにできるプロダクトではないかと考えています。専門医と内視鏡AIの診断支援によって診断の質を上げることができれば、患者さんはより高精度の検査を受けることができるようになります。また、内視鏡AIによる診断支援を受けることで、検査を行う内視鏡医の負荷を減らせる可能性もあります。更に、導入した医療機関においても、業務効率化とリスク低減がもたらされる可能性が考えられます。
現在、AIMは内視鏡AIの製品化、薬事承認取得に向けて準備していますが、将来的には内視鏡AIは検出・鑑別・範囲診断といったように、内視鏡検査における各工程で診療をサポートできる可能性があります。現時点では内視鏡AIができないこともありますが、研究によっては専門医と同等かそれ以上の結果が出ているものもあり、日本のみならず世界へ展開できる可能性がある日本発の医療機器だと考えています。「内視鏡AIがあることが当たり前」となる未来に向けて、これからも邁進してまいります。
パネルディスカッション
勉強会の後半では、出席いただいた先生方とパネルディスカッションが行われましたので、ご参加頂いた先生と内容の一部をご紹介致します。
パネルディスカッションにご参加頂いた先生方のご紹介
田中 靖人 先生
熊本大学大学院 生命科学研究部 生体機能病態学分野 消化器内科学 教授
専門分野/専門領域:肝疾患全般
直江 秀昭 先生
熊本大学大学院 生命科学研究部 生体機能病態学分野 消化器内科学 准教授
専門分野/専門領域:消化管疾患全般
具嶋 亮介 先生
熊本大学病院 消化器内科 特任助教
専門分野/専門領域:消化管疾患の診断と治療
宮本 英明 先生
熊本大学病院 消化器内科 特任助教(教育医長)
専門分野/専門領域:消化管悪性腫瘍、胆膵悪性腫瘍
脇 幸太郎 先生
熊本大学病院 消化器内科
専門分野/専門領域:消化管内視鏡診断と治療
パネルディスカッション~内視鏡AIの開発過程と、内視鏡診療の将来展望~
(田中先生)
「これまでAI構築、特にアノテーションが非常に難しかったと伺いました。検出における感度は優れていますが特異度はまだ不十分であるので、専門医にとっては補助的な役割になるのではないかというイメージを持ち、一方でダブルチェックの機能は診断過程において大きな役割を果たすと思いました。遠隔診療の観点では、地域貢献も期待できそうです。また、現在は大腸だけですが、今後上部の診断もできるようになれば、使われる施設も増えるのではないかと考えました。最終的には、熊本メディカルネットワークを活用しながら熊本県でもやっていきたいと思います。しかし、匿名性等の倫理的な対策が確立されているのかが懸念点としてあります。」