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「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)

株式会社AIメディカルサービスでは、大澤博之先生(自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 教授)に、内視鏡検査におけるがんの見落としとそれを防ぐための色調を考慮した診断法について「新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング~LCIの基礎から応用まで~」という題目にて、講演会を開催していただきました。本稿では講演会の内容を5パートに分けてご紹介いたします。

Part1の本記事は胃がんと内視鏡診断の基礎知識についての解説です。前半では、胃の各部位の名称や胃がんの分類について、後半では胃がん診断の課題やその解決策となる画像強調内視鏡診断について解説していただきました。

Part1:胃がんと内視鏡診断の基礎知識
Part2:色調コントラストの重要性とLCIの特徴
Part3:LCIの仕組みと観察における留意点
Part4:スクリーニングでは瞬時の判断が求められる
Part5:見えないがんを見えるがんに変えて、胃がんの見逃しを防ぐ

胃がんに関する基礎知識

胃各部の名称

「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)
食道(esophagus)と胃の境界線付近を噴門(cardia)、胃と十二指腸(duodenum)との境界線を幽門(pylorus)と言います。胃の中は上から胃底部(fundus)、胃体部(body)、幽門前庭部(antrum)と分かれており、胃の大きく外側に膨らんで彎曲した部分を大彎(greater curvature)、内側(lesser curvature)の短い部分を小彎と呼びます。

胃がんの肉眼形態分類

「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)
胃がんの肉眼型分類は、0型から4型までの5タイプあり、そのうち0型:表在型に分類されるものを早期胃がんと呼びます。早期胃がんは、0-Ⅰ型(隆起型)、0-Ⅱ型(表面型)、0‐Ⅲ型(陥凹型)に分かれ、更に0-Ⅱ型はやや隆起している0-Ⅱa(表面隆起型)、平坦な0-Ⅱb(表面平坦型)、少し陥凹している0-Ⅱc(表面陥凹型)のいずれかに分類されます。

胃がんの組織分類

組織分類において、胃がんは大きく分類して分化型(Intestinal type)、未分化型(diffuse type)の2種類があります。分化型には、乳頭状に隆起して腺管を形成するパップ(pap)とも呼ばれる乳頭状腺がん(Papillary adenocarcinoma)や、長く腺を形成している腺管がん(Tubular adenocarcinoma)があり、また、未分化型には低分化腺がん(Poorly differentiated adenocarcinoma)や印環細胞がん(Signet ring cell carcinoma)があります。

胃がん診断は非常に難しい

なぜ、胃がん診断は難しいのか?

胃がん診断が難しい理由は、「胃の背景粘膜に複雑な炎症性変化があるから」です。具体的には、凹凸不整がある胃炎、腸上皮化生などがあります。

「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)
左の症例では、陥凹性の病変が散見され、がん病変かどうか非常に分かりづらくなっています。右の症例では、腸上皮化生に胃前庭部が置換されています。このような炎症性変化は、人間の視覚情報のみで胃がんと区別することが非常に難しくなります。一般的に白色光画像の胃がんの見逃し率は20~40%と言われており、熟練の内視鏡医でも炎症と胃がんを鑑別することが難しいことが分かります。

何を改善すれば問題は解決できるのか?

炎症と胃がんを鑑別する明確なカテゴリ―分類が存在すれば早期胃がんの見逃しを回避することができます。例えば、炎症部分は紫に、胃がんの部分はオレンジ色に観察されるというように情報をわかりやすく分類・整理することができれば、胃がん診断は比較的容易になります。

画像強調内視鏡診断は炎症と胃がんを色調によって明確に分類可能

NBIから始まった画像強調内視鏡診断の歴史

「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)
内視鏡の歴史を振り返ると、画像強調内視鏡診断は2004年から始まっています。最初に登場したのがNarrow band imaging(NBI)と呼ばれる診断方法です。その後、Flexible spectral Imaging Color Enhancement(FICE)、i-scan、Blue LASER imaging(BLI)が開発され、最も新しい診断法としてLinked Color imaging(LCI)が登場しました。このように新しい診断法を応用し実践している施設では早期胃がんの症例数が増加し、画像強調診断をスクリーニングで用いるということが非常に重要であるということが分かってきました。

「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)
画像強調内視鏡診断には、大きく分けて「スクリーニング」と拡大画像による「精査」の2つがあります。主としてNBIは拡大観察に、FICEはスクリーニングに、i-scanはスクリーニングと拡大観察の両方に使われてきました。LCIはどちらかと言えばスクリーニングに強いという特徴があります。

色調診断は白色光画像診断に比べ何が優れているのか?

「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 1(自治医科大学・大澤博之先生)
こちらは地域のprivate clinicで撮影された胃体部の白色光画像です。

多田 智裕(医師)
Tomohiro Tada
医療法人ただともひろ胃腸科肛門科 理事長 株式会社AIメディカルサービス 代表取締役CEO 医師

概略
1996年東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院外科研修医として勤務。
2005年に東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。
2006年より武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科開業。
2012年より東京大学医学部腫瘍外科学講座客員講師。
2017年株式会社AIメディカルサービスを設立、代表取締役CEOに就任し、現在に至る。  

所属学会・資格・役職など
浦和医師会胃がん検診読影委員
日本外科学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本大腸肛門病学会専門医

著書・論文など
【著書】
『行列のできる 患者に優しい“無痛”大腸内視鏡挿入法』など著書複数。

【論文】
Application of artificial intelligence using a convolutional neural network for detecting gastric cancer in endoscopic images.
Hirasawa T, Aoyama K, Tanimoto T, Ishihara S, Shichijo S, Ozawa T, Ohnishi T, Fujishiro M, Matsuo K, Fujisaki J, Tada T.
Gastric Cancer. 2018 Jul;21(4):653-660. doi: 10.1007/s10120-018-0793-2. Epub 2018 Jan 15.
PMID: 29335825 など多数

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