インタビュー INTERVIEW

「精度・安全面共に高水準な内視鏡検査を提供…地域医療の発展にも奮闘する」今川敦先生(今川内科医院 院長)

gastroAI onlineでは消化器内科の先生を中心にインタビューを行っています。今回は香川県三豊市に位置する今川内科医院 院長の今川敦先生にお話を伺いました。

今川先生は北里大学医学部を卒業後、岡山大学病院を中心に多くの基幹病院で勤務。これまで磨き上げた内視鏡検査の技術を活かし、現在は父・今川省先生と共にクリニックを経営しており、地域に密着したかかりつけ医として地元の患者さんから厚い信頼を得ています。

また、過去には英文内視鏡専門誌:World Journal of Gastrointestinal Endoscopyの編集長を務められるなど、各専門誌の編集員として現在も消化器内科・内視鏡領域にて、多岐にわたるご活躍をなさっています。

3代目として継承開院、研修医時代にみた医師の真摯な姿に惹かれ消化器内科へ

今川先生のご経歴について教えてください

現在、継承開院・3代目としてクリニックの院長を務めています。

一般内科、消化器内科、内視鏡内科を診ており、内視鏡検査に関しても父の代から行っていました。父は慈恵医科大学の故・鈴木博昭先生(内視鏡医学講座第二代教授)と同級生で仲が良かったようで、その影響を受けて胃カメラを初期のころから導入しており、私が継承するギリギリまで自身で検査していました。

継承前提でキャリアを考えていたのでしょうか

父からはクリニックを継承しろと直接言われたわけではなかったのですが、「継いでほしい」という想いはひしひしと感じておりましたし、父の姿を尊敬していましたので、将来的には開業しようと考えていました。

初期研修で入った岡山大学病院の第一内科は、当時卒後5~6年目までに2,3か所の研修病院をまわるという育て方をしており、私自身は3か所研修病院を回った後で岡山大学に戻りました。

その後、国内留学で東京大学(矢作直久先生:現慶応義塾大学病院 腫瘍センター 教授のご指導)に行かせてもらったり、津山中央病院に勤務したりした後に、地元の基幹病院である三豊総合病院で内視鏡センター長を務め、2015年に開業しました。

初めから消化器内科を志されていたのでしょうか

最初の頃は大雑把に内科医になろうと考えていました。実は、夜中に呼ばれて緊急で対応するような、ハード且つ患者さんに感謝してもらえるような科に憧れがありまして。父が消化器内科であったことも影響して、循環器内科や消化器内科に関心を持っていました。

その中で、消化器内科の上司に恵まれたこと、そして最終的には自身が研修を受けていた病院の先生が、消化器内科に対して真摯に向かっている姿を見て「これだな」と思い、消化器内科に進むことを決めました。

2021年12月に移転開業6周年を迎えた今川内科医院

2021年12月に移転開業6周年を迎えた今川内科医院

”あさイチ内視鏡検査”で出勤前の受診が可能、安全面も強く意識

今川内科医院の特徴を教えてください

私の一番得意な分野は内視鏡検査です。来院される地域の患者さんには、高いレベルの検査を受けていただければと想いながらやっています。

当院の特徴ですが、14:00〜16:00の大腸内視鏡検査に加え、働いている方向けに朝の8時から9時の時間帯も上部消化管内視鏡検査をやっています。時間が早い分準備が大変な部分もあるのですが、鎮静剤を打たない場合であれば、早ければ9時過ぎには帰宅もできます。

クリニックで内視鏡検査を受ける場合、午前診療と午後診療の間だけで行うことが一般的です。しかし、働き盛りの方にとってはその時間帯に検査を受ける、つまり会社を休んでまで検査を受けるというのはハードルが高く、それだけで検査に対して億劫になってしまいます。朝の時間帯に検査を行うことで、そのような方々にも検査を受けていただけています。

まるでビジネスホテルのような今川内科医院のリカバリールーム

まるでビジネスホテルのような今川内科医院のリカバリールーム

内視鏡検査だけではなく、一般内科診療もされています

得意な分野は内視鏡検査ではありますが、開業にあたり内視鏡検査だけをやるという考えはありませんでしたので、内科も全般的に診ています。糖尿病や高血圧のような生活習慣病をはじめ、骨粗しょう症やアレルギーの患者さん等も来院されます。

各疾患に対する薬は新しいものが出ますし、治療法も進化するので、対応していくには常に情報収集が必要です。経験と知識をもって、どのような方が来られても内科的なサポートを適切にしてあげられるようにし、且つ、安心かつ安全なレベルの高い内視鏡検査を提供する。それがクリニックを運営する上で目指しているところです。

安全面では具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか

例えば内視鏡検査においては、血圧等のバイタルサインや意識状態といった検査後の患者さんの状態を点数化するためのチェックシートがあり、開業後まもなく導入しました。患者さんの安全の為の確認事項を入念にチェックすることを、私だけではなくスタッフ全員で強く意識しています。

また、新型コロナウイルスの対策にも力を入れています。「Endo barrier」という飛沫感染対策の内視鏡用ウイルス感染防御システムを導入していまして、患者さんはもちろん、働いてくれるスタッフの安心・安全も確保できればと考えています。

感染症対策が施されている内視鏡検査室

感染症対策が施されている内視鏡検査室

ペアで行う内視鏡による胃がん検診、受診者数は伸びている一方で課題も

先生は三豊市のがん検診にも携わられていますが、現況を教えてください

内視鏡による胃がん検診、導入初期の2018年頃は受診されたのは200人程度の方だったのですが、昨年は700人程の方が受けてくれました。とはいえ、それでも対象となる人の中から700人と言いますと、まだまだ少ない。若い方でも胃がんの原因となるピロリ菌に感染している方もいらっしゃると思います。

対象の方には市から二年に一度通知が届くのですが、来院した患者さんに聞くとそもそも通知が来ていることに気づいていない方の割合が高いです。もちろん市のホームページには検診について掲載されていますが、相当意識が高くないとそういうものは見に行きません。

また、対象となる50代や60代の方が受診することが望ましいのですが、その年代の方はまだまだ働いてらっしゃいますし、職域検診であれば会社の命令で受けることができますが、住民健診の胃カメラの場合は会社を休まなければいけないので、そうなるとハードルが高くなります。

私自身は先ほどの話のように朝の内視鏡検査に対応する等しておりますが、地域全体の課題として、そのジレンマをどうにかしたいなという想いは持っています。

インタビューに応える今川先生

インタビューに応える今川先生

内視鏡による胃がん検診に対応されている先生方はどのような取り組みをされているのでしょうか

当地域では、胃内視鏡検診の二次読影(医師が撮影した内視鏡の画像を、他の医師がチェックする仕組み)の際、内視鏡専門医と非専門医がペアで行うようにしています。

非専門医の先生が専門医の先生と症例を診ながら話する機会は滅多にないので、検査の経験はあるけど自信がない先生や、知識が偏っているような先生が検診を通じてレベルを高めていくことが狙いです。

田舎ですのでご高齢の先生も一定数おりまして、そのような先生は車で言えば、もう一回自動車学校にいくような感覚だと思います。つまり自身の検診のスタイルが一度確立した後に、そのやり方を見直すことになるからです。

このように制度自体が検査精度の均てん化に役立っていると感じている一方で、現場のキャパシティ、人手の不足というのは認識しています。

そのような課題は我々が開発しているAIで解決できる部分もあるでしょうか

個人の努力で解決できない範囲をテクノロジー、AIで解決するという動きは今後必須になってくると思います。内視鏡検査における病変の見落としを減らすことにもつながると思いますし、三豊市の内視鏡による胃がん検診で専門医と非専門医がペアを組んでいるように、AIに教えてもらったドクターのレベルも上がってくると思います。

ただ、そのためにはコストを抑えて検査数が多くないような施設でも気軽に導入できるようにする必要があるとも考えています。車で例えると、「個人で車を1台買おう」となるとハードルが高く感じますが、「市で車を3台買ってみんなで使いまわす」ということであれば敷居は下がります。

広くみんなが使えるAIを目指してもらえると嬉しいです。

受付には今川先生を模した人形が飾られている

受付には今川先生を模した人形が飾られている

患者さんの満足、そして地域のドクターのレベルアップに貢献したい

先生の今後の展望について教えてください

クリニックとしては、地域に密着した『かかりつけ医』を目指し、より苦痛のない内視鏡検査を目指して今後も努力していきます。ありきたりではありますが、これまでそうしてきたように、患者さんの安心と安全に配慮して、レベルの高い医療を提供していき、患者さんに満足してもらいたいと思っています。

また、国内外のたくさんの先生方と接していると、当地域の医療はまだまだ遅れているという感覚があります。田舎ですので、新しいものに触れたり、導入したりということが簡単ではない部分もあると思います。

地域の先生方を見ていると、患者さんに対して熱心に、一生懸命やろうという気持ちを持った先生は多いです。勉強会を開催すると、むしろ非専門医の先生の方が積極的に来られて質問するなど、前向きに取り組まれている様子が伺えます。

今後も学会での活動やがん検診等の地域の交流等を通じて、地元や香川県、四国のドクター全体のレベルを上げていくことに貢献したいと考えています。

編集 / 南 洋佑
Yosuke Minami
株式会社AIメディカルサービス 事業推進室

概略
新卒で医療×ITのビジネスを展開しているベンチャー企業に入社。生活習慣病患者さん向けのオウンドメディアにて、編集やライティング業務に従事。消化器領域における人工知能の活用に可能性を感じたこと、会社のビジョンに共感したことから、2020年より現職。「有益な情報をわかりやすくお伝えすること」をモットーに、gastroAI onlineにて記事を執筆中。

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