インタビュー INTERVIEW

[インタビュー]「内視鏡診療において様々な課題がある中で、内視鏡医の期待、想像を超えるAIを創ってほしい~前編~」内藤裕二先生(京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座 教授)

「内視鏡診療において様々な課題がある中で、内視鏡医の期待、想像を超えるAIを創ってほしい~前編~」内藤裕二先生(京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座 教授)

gastroAI onlineでは、内視鏡医の先生に役立つ情報を発信しています。今回は、京都府立医科大学生体免疫栄養学講座にて教授を務められる内藤裕二先生に、内視鏡診療および内視鏡AIについてお話を伺いました。本稿ではインタビューの内容を前編/後編に分けてご紹介いたします。前編では京都府立医科大学の特徴や内視鏡診療の課題についてお話いただきました。

内藤先生は、消化器専門医として現在も診療にあたりながら、最新医学にも精通しており各地で精力的に講演を行われています。また、生活習慣病や酪酸菌の研究のほか、京丹後長寿コホート研究で腸内フローラ解析に携わるなど、腸内細菌研究の第一人者という顔もお持ちです。

トップレベルの医療を京都府民に提供するために臨床へ注力

京都府立医科大学の理念と取り組みについて教えてください。

京都府立医科大学の理念は、「世界トップレベルの医療を地域へ」です。開学以来、京都府民のための医療を目標にしてきました。最新鋭の医療を府民のみなさんに提供するべく、すべての診療科が研究だけでなく臨床にも力を入れています。

本学は2022年で150周年を迎える日本でも最も歴史ある医科大学の1つで、内視鏡との関わりの歴史も古く、多くの内視鏡医を京都府内の病院に輩出することで、地域の内視鏡技術のレベル向上に貢献してきたと自負しています。また、施設間における紹介では、紹介する医師の顔が見えるということが重要で、府下の開業医の先生方との強固なネットワークも構築しており、治療の成果を報告するなど地域連携も率先して行ってきました。

他の医師が見つけたがんを切っているだけでは駄目

内藤先生が考える内視鏡診療が抱える課題とは何でしょうか?

「がんを見つける」という観点で、内視鏡医を育てる環境に課題があると考えています。私たちの時代とは違って、今の先生たちは大学病院での教育を経て医師になる人がほとんどですが、診断能力育成の目線で考えると矛盾があると思っています。がんを見つけることは私たちにとって大切な技術ですが、がんがすでに見つかった患者さんが来るところが大学病院です。つまり内視鏡医が、がんを自ら見つける力を養うには最適な環境ではないと考えています。他の医師が見つけた病変を切っているだけでは駄目で、切る技術だけでなく見つける技術も身につけなければ一人前の内視鏡医とはいえません。

学会の演題を見ても、がんを見つけることよりも、どう切除するべきか、どうESDを上手く使うべきか、そればかりに意識が向いているように思えます。京都では開業して内視鏡検査を行われている先生も多いので、内視鏡医が1人で検査を行うケースも少なくありません。そして、早期胃がんの発見は難しいです。そのような状況で、これから内視鏡検診を普及させていくにあたっては、内視鏡医一人一人の実力を如何に伸ばしていけるかが、非常に大切だと考えています。
内藤裕二先生(京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座 教授)2

内視鏡診療の未来はどうなると思われますか?

今後は、内視鏡によるスクリーニングがさらに重要視されると思います。胃がんの治療においてはストラテジーがほぼ確立されており、診療とフォローアップをしっかり行えば胃がんが原因で死に至る可能性は大幅に低減できます。しかし、国内では年間約45,000人が胃がんで亡くなっています。新型コロナウイルスの影響もありますが、定期的に内視鏡検診を受診する人やピロリ菌除去をする人の数が伸びていないことが主な原因だと思います。これを解決することが、内視鏡診療における理想的な未来につながると思います。

そして、医療とは医師を幸せにするためのものではありません。患者さんを幸せにするためのものです。病変の切除ばかりに力を入れるのではなく、病気にならない人を増やすことを目指さなくてはなりません。内視鏡診療が向かうべき究極の目標とは、私たちの仕事がなくなることです。極端な例ですが、医師が内視鏡を捨てるときが来たら、みんな幸福になっているはずです。私たち内視鏡医は仕事がなくなって不幸になりますが。

「本当に完成するのだろうか」と感じた内視鏡AIの第一印象

当社より共同研究の提案があったとき、内視鏡AIにどのような印象を持ちましたか?

当初は胃や腸、十二指腸などの器官すら区別がつかない状態で、正直なところ本当に完成するか疑問でした。現時点でも、深達度が正確にわかるようなレベルには達していないでしょう。しかし、まだ課題はあるものの、現段階ではスクリーニングにおける医師の判断の確認には活用できるのではないかと思うようになりました。慢性胃炎の中に異常を見つけたときに、内視鏡AIとの診断の一致は、医師に安心感を与えるはずです。

一方、内視鏡AIが出来上がっていく様子を見ていて、医師が内視鏡AIに頼り、自らの診断を疎かにする時代が来るかもしれないとも感じました。しかし、若い人たちは柔軟ですので、これは私の杞憂かもしれません。内視鏡AIを使いこなすだけでなく、更に新しい試みをする医師も出てくることでしょう。新しい技術や取り組みをうまく活用するような人が、これからの新しい時代を担っていくと考えています。

ちなみに、私たち年寄りにはそれはできません。なぜなら、死ぬまで「機械には負けない!」と思っているからです。
内藤裕二先生(京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座 教授)内藤裕二先生(京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座 教授)

後編はこちら

多田 智裕(医師)
Tomohiro Tada
医療法人ただともひろ胃腸科肛門科 理事長 / 株式会社AIメディカルサービス 代表取締役CEO 医師

概略
1996年東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院外科研修医として勤務。
2005年に東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。
2006年より武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科開業。
2012年より東京大学医学部腫瘍外科学講座客員講師。
2017年株式会社AIメディカルサービスを設立、代表取締役CEOに就任し、現在に至る。

学歴
1996年3月 東京大学医学部医学科卒業 
2005年3月 東京大学大学院外科学専攻卒業     

職歴
1996年6月 東京大学医学部付属病院 外科 
1997年6月 国家公務員共済組合虎ノ門病院 麻酔科
1999年12月 東京都教職員互助会三楽病院 外科 
2001年6月 東京大学医学部付属病院 大腸肛門外科
2005年4月 東葛辻仲病院 外科 
2006年7月 武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科院長
2012年3月 東京大学医学部付属病院 大腸肛門外科学講座 非常勤講師 
2017年9月 株式会社AIメディカルサービス 代表取締役CEO

所属学会・資格・役職など
浦和医師会胃がん検診読影委員
日本外科学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本大腸肛門病学会専門医

著書・論文など
【著書】
『行列のできる 患者に優しい“無痛”大腸内視鏡挿入法』など著書複数。

【論文】
Application of artificial intelligence using a convolutional neural network for detecting gastric cancer in endoscopic images.
Hirasawa T, Aoyama K, Tanimoto T, Ishihara S, Shichijo S, Ozawa T, Ohnishi T, Fujishiro M, Matsuo K, Fujisaki J, Tada T.
Gastric Cancer. 2018 Jul;21(4):653-660. doi: 10.1007/s10120-018-0793-2. Epub 2018 Jan 15.
PMID: 29335825 など多数

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